高見順「サイコロ形の世界」

2005/8/18 1:16
がっつり仕事。
気づいたら身分証明書を背中にブラ下げたまま地下鉄に乗ってた。
髪型が髪型だけに、車内の人たちにはおもしろかったかもしんない。

最近読んでおもしろかった詩。高見順「サイコロ形の世界」。
残念ながら引用はできないけど、こんな内容の詩。

「僕」はサイコロ形の病室に寝ている。
病室がサイコロだとしたら、床に重さがかかってるわけだから、
このサイコロはイカサマってことになる。
病室なら部屋を出ればイカサマにはならないけど、
人間は世界の外には出られないわけで、
僕は世界というサイコロでは確実にイカサマを成立させていることになる。

とまあ、ここまでの内容でこの詩が終わっていたら、
病室をサイコロっていうスケールに見立てるうまさはさすが詩人でも、
人間の罪深さとか、あるいは「どーせ人間イカサマなんだからさ」という開き直りを主張するような主題で、ちょっと陳腐な結末だなあと思ってしまう。
しかしこのあと作者がもっていった方向は、「サイコロを振らんとする者」だった。
つまり必要なサイの目を出せるように、
運命を自らの力で変えることに賭けるしかないだろうという方向にもっていった。
このあたりに、高見順っていう詩人のすばらしい人間性を感じた。

詩人のスケールの大きさと、その純粋な人間性に感服です。