現役ボクサーパンツ烈伝

2005/9/6 1:50
ひたすら仕事……が、終電までのあと1時間の踏ん張りが利かんかった。

菊池寛に「形」という短編小説がある。
時は戦国時代、中村新兵衛という槍の名手がいて、「槍中村」と恐れられていた。
戦の折には猩々緋(しょうじょうひ)の服折に唐冠のいでたちで敵陣へと殺到する。
猩々緋に唐冠を見るや、敵の雑兵は怯んでしまう。

ある日新兵衛は初陣を飾る主君の子に、猩々緋の服折と唐冠を貸す。
猩々緋をまとった若い侍は、端武者数名を蹴散らし、自陣へと戻る。
自分の「形」だけですら、あれだけの力を持っているのだと、
会心の笑みを浮かべる新兵衛。
二番槍を合わせようと、続いて新兵衛が敵陣に飛び込むのだが……
この日は黒皮おどしの鎧に南蛮鉄の兜といういでたちの新兵衛に対して、
猩々緋にやられた恨みを晴らさんとする敵兵。
新兵衛は常の二倍の力で戦うが、敵の槍に脾腹を貫かれる。
つまり、「力」を持っていたのは新兵衛自身ではなく、
猩々緋の服折に唐冠という新兵衛の「形」だったというわけである。

格好というものはバカにはできない。
強そうに見せることで、自分が優位に立てることは往々にしてあるのである。
(ここで「なるほど、だから管理人はいつも度付サングラスなんですね〜」と余計なツッコミを入れないように)
ボクシングで言うならば、ボクサーパンツが選手の「形」ということになろう。
ボクサーパンツに刻まれる言葉には、所属するジムの名前や、
自分の名前、家族の名前、スポンサーさんの名前などが多い。
しかし、中にはこんなものも……。
そんなわけで、今日は最近見たボクサーの「形」、
ボクサーパンツに刻まれた言葉のいくつかを、挙げてみたい。

川崎タツキ草加有沢):「Pit Bull」
→日本語に訳すと、「闘犬」。
噛み付かれるとヤバそうだ。
事実、川崎の右フックは、当たれば一撃必沈の破壊力を秘める。

木村登勇(横浜さくら):「木村術」
→臀部に大きく「木村術」。
事実彼のボクシングは、相手にとってどこからパンチが飛んでくるのかわからない。

・小野寺洋介山(オサム):「なにくそ」
→いくら打っても倒れなさそうである。
ちなみに、「なにくそ」はオサムジムの選手に共通の標語らしい。

・阪東タカ(フォーラムスポーツ):「死人」
→……い、いや、「私はすでに死んでいます」ではなく、
「一度死んだ男ですから何も怖くありません」の意味かと推測します。

・大嶽正史(石橋):「甦れ、大和魂
→これはカッコイイ!黒地に白字で「甦れ、大和魂」。
勝っても負けても、常に完全燃焼の男。
ちなみにローブにもこの文字が。

俺的には大嶽選手がNO.1、なのでした。