快気祝い

土曜日の夜から実家に帰っていた。
今日(もう昨日だが)は親父の快気祝いだった。
実は親父は先月から入院、手術を経て、先週実家に戻ってきたのだった。
病床での親父を見たときには、親父って人間はこんなに小さかったのかと思ったのだが、実家で見る親父は、またいつもの大きさに戻っていたように思えた。

ここ1ヶ月、休みの日にはできるだけ有明にある病院へ顔を出すようにしていた。
親父とざっくばらんに話す機会が、入院中というのも皮肉な話だ。
「お前は不器用だからな……」
……ああ、そうだね。自分でもそう思うよ。
「お前もさ、少しは若いときから酒は控えろよ」
……あのなあ、俺が誰の子供だと思ってるんだよ。
産みの親が酒豪のアンタじゃ、俺に酒が控えられるわけがあるまい。

実家からの帰り際、玄関で「いろいろありがとうな」と深々とお辞儀をされた。
何か、向田邦子の「父の詫び状」みたいだな。
「余生」ってものの割合が大きくなっちまった親父の姿を見たような気がすると同時に、俺ももうそんなに長く生きちまったんだなあと実感した。