今月の「ボクマガ」「ワーボク」

人間ドッグ甲府探訪の折に読んでいた「ボクシングマガジン」「ワールドボクシング」から、気になった記事をいくつか。


・今月の「ボクマガ」、一番気になったのは、長谷川・粟生の対談と仲里繁の記事の2箇所で「オーラ」という言葉が使われていたこと。
「オーラ」か……これって、とても難しいんだよね。
自己顕示欲を自己肯定できていれば「オーラ」はプラス以外の何もの以外でもないんだけど、「俺ってそんなに目立ちたいわけじゃないんだけど」って気分のときには、往々にして「オーラ」が邪魔になる。
俺も結構「オーラ」が出ているほうらしく、大学時代にたまたまスロープの前を歩いていた友人Mに突然振り向かれて、「やっぱりぽんせだよ。発散するポンセパワー」とか言われてしまったこともあって……。
こんな髪の毛してても、本人、目立とうとか、そういう気持ちって、実はあんまりないんだよね。
髪の毛の色変えてるのも、ネクタイしないのも、「何でふつうにしなきゃいけないのかがサッパリわからないから」なだけでさ。
逆に髪の毛の色変えても、ネクタイしてなくても、全然違和感なく自然に他人に認められる人だっている。
ボクシングは精神的なプレッシャーって試合に大きく響くから、ボクサーにとっては作られた「オーラ」だってプラスなのかもしれないけれど(そして飾ることによって往々にして「オーラ」は作られるけれど)、ボクシングを離れて一般人となったときに、「オーラ」が自分の理想を邪魔することだってあるんじゃないかな、と思った。
それって、結構苦しいんじゃないかな、イメージが強ければ、強いほど。
かといって、「オーラ」があればこそ、ケバケバしい業界で生きられるわけでもない。
ゆえに、長谷川穂積は、ああいうボクサーでいいんだと思う。
一見ふつうのお兄さんっぽくって、時計屋でアルバイトしている長谷川で。


・「ボクマガ」「ワーボク」共通。クレイジー・キムABCOタイトル獲得。
今回はルポとしては「ワーボク」の勝ちだと思う。写真もよく撮れているし。
ただ、「ボクマガ」のほうは、敵地でのタイトル戦がいかに過酷なものかという点では、うまく書けていた。
日本に来た外国の選手はかわいそうなのではないかという話を聞く機会が、人権に対して過敏になりすぎている日本ではよく聞かれるけれど、じゃあ、タイで日本人が試合をやったら、現地の人はどう反応するのか?
この反応って、もし自分がタイの人だったならば、案外アタリマエではないのか?
なぜ日本ではそういう雰囲気にならないのか?それが人間の知性の表れであり、知的国家の象徴であると、果たしていえるのかどうか。
生命力って問題も絡めて、日本人は考えてみてはいかがかな、と。


・「ボクマガ」、コウジ有沢引退、4pで特集。
信頼している人に厳しいことを言われたときの信憑性、これは胸に迫る。
でも、そういう時って、意外に客観性を信じたほうがうまくいくことが多い。
ジムを支えてきたトップイベンターの真摯な気持ちに、感動。


・「ボクマガ」の「戦士ゆえ……。」は先日スーパー・バンタム級の日本王者となった福原力也。これは泣ける……。
俺、いままで「イケメン」って言葉を多少の侮蔑と羨望をこめて使っていたような気がするけれど、福原の記事を読んで思った。
人間の顔のイメージなんて、ホントにほんの一部しかその人の人生を表しちゃいないんだって。
福原の経歴は会社の重役だった。でも、「重役」が社会的にどんな地位かではなくて、「会社」がどんな会社なのか、その会社における「重役」とは?って点に、重点は置かれるべきなんだね。
福原があの試合で気持ちが前面に出ていたのが、よくわかった。
それにしても、「ボクマガ」、「戦士ゆえ……」も終わり、「月の向こう側」もすでに終わりっていうのは、寂しいなあ……。
ボクサーっていう人間の深さが伝わる記事を、これからも書き続けてもらいたいのだが。


・その「ボクマガ」で多分今後もコーナーは残るのだろう「男たち」。
これもいいドキュメントだなあ。
ヒデ黄王。このボクサー、存じなかったけれど、東日本の新人王を取った直後に病気のため引退。それでもリングに立つことをあきらめられず、実に14年の月日を経て、リングに復帰。見事1RKO勝ち。これで8戦全勝。
この7勝目から8勝目までって、重い……。
いくつになったってさ、満たされてないものがある。夢がある。
行動し、もう一度リングに立ったヒデ黄王の剄さに、感動。


・「ボクマガ」、「RECENT」に川崎タツキの記事。
1/24にクレイジー・キムとのタイトル戦が内定しているタツキさん。
「当たって砕けろの気持ちで挑めますから」。
そう、思い切り行って当たれば、おもしろい結果になるはず。
あとはあしたのジョーのカーロス戦のように、もらっても「きくーぅ」って笑えるくらいの気持ちで行ければいい。


・「ボクマガ」、「熱戦譜」。10/19、後楽園ホールのバキロフ×岩下戦。
「6回、ホールが大きく揺れる地震があり、これを機に岩下が若干盛り返しを見せたが」って……思わず笑った。
ウズベキスタン出身のバキロフ、余程地震が怖かったんだなあ。そしてそれに乗じた岩下って……。
この記事を書いたライターさんに、座布団一枚。


・「ワーボク」、「リングサイド・ニュース」。
坂本博之、1/14後楽園ホールで再起戦。相手はタイ・ライト級の10位。
この相手はジム側の意向だね。でも、勝利で復活ののろしを揚げてほしい。
しかし、前座が「自称モテない男」小堀×「KO・センセーション」真鍋の日本タイトル王座決定戦って、こっちも見逃せないなあ。


書いていて、後楽園ホールの地響きが懐かしくなってきたと思ったら、もうこんな時間だ(一回消えたからな……)。おやすみなさい。