紅葉について

ひと段落して少し気持ちに余裕ができた今日、職場から窓の外を眺めると、木々の葉が色鮮やかに紅葉していた。
確かにここ数日、急に冷え込みが厳しくなったもんな。
今年ももうこんな時期なのか。


紅葉の思い出をいくつか。


いままでで一番美しかった紅葉は、そうだなあ、5〜6年前に友達連中で観に行った、静岡県寸又峡の紅葉かな。
あれはすごかった。「絢爛」と言うにふさわしい紅葉。
「夢の吊り橋」を眼下に、中腹から眺めた紅葉の、美しかったこと。
すっかり気分がよくなって、日帰り温泉でみんなで俳句を作り合ったりしたっけ。
目的地まで、大井川鉄道ってSLで行ったのも、よかったなあ。


中学3年生のときの紅葉の思い出。
休み時間に、当時のガキ大将のSと俺で、学校に持ち込んじゃいけないプロ野球カードで遊んでいた。
知っている人は知っているだろう。サイコロを二つ振って、出た目でその打席の結果が出るというやつだ。
二人とも完全に興奮状態。
「ぽーんせー、ぽーんせー、イケイケ場外へー、(カラカラカラッ)6・6!ホームラーン!!」
なーんてやってたんだと思う。
そのとき、教室の後ろから担任のUが入ってきた。
「なにやってんだオマエら!」
この先生の得意技が、「紅葉(もみじ)」。
早速シャツを上にまくられた俺とS。
「バッチーン!!」
俺とSの背中には、真っ赤な紅葉の花が咲いたんだっけ。
S、その後高校に上がれなくて、他の学校に行っちゃったんだよな。


そういえば数年前、俺にお香のよさを教えてくれた「紅葉」ってやつがいたなあ……
以来、俺も家でお香を点てるようになった。
でも、やつの話はちょっとディープすぎるかな。割愛。


最後に、「紅葉」にまつわる有名な和歌を二首ほど。


ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは  在原業平


古今集』に収められ、百人一首にも撰ばれた名高い歌。
紅葉が川面に落ち、赤く染まった清冽な川の情景が頭に浮かぶ、色彩感に溢れた歌だ。
龍田川は歌枕。現在の奈良県斑鳩を流れる川で、昔は紅葉の美しさで名高かったという。
今でも紅葉は美しいのだろうか。俺は訪れたことがない(いや、もしかしたら通り過ぎてはいるのかもしれないが)ので、わからないのだが。


見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮  藤原定家


新古今集』。「花」「紅葉」のイメージがあるから、結句「秋の夕暮」の寂しさがいっそう強調される。
叙情的でありながら、現実に実体としては存在しない「紅葉」を巧みに用いた、観念的な歌だ。
日本の秋の美しさと寂しさは表裏一体。そんなところから、秋は古来から「情趣の深い季節」と評されるのだろう。


今日は仕事を早めに切り上げ、実家に帰ってきた。
明日は一日、とくに予定のないオフ。
まずは付き合いの長い美容室で、三ヶ月ぶりに髪の毛でも切りますかね。
秋だし、紅葉をイメージした髪型にでもしてもらいますか。
そのあとは、新宿で「デスバレー」でも打ってこようかな、と。